「従業員を信頼している」「うちの組織では大きな問題は起きていない」――こうした価値観は決して間違っておらず、健全な組織文化の基盤となります。

 しかし一方で、情報システム部門やセキュリティ責任者の皆さまは、監査対応や内部不正リスクへの対策強化の必要性を感じつつ、「監視を強化すると信頼や心理的安全性が損なわれるのではないか」と悩む場面も少なくないでしょう。

 では、性善説に基づく信頼と、アクセスログやモニタリングなどの“見ている”仕組みは対立するものでしょうか。それとも両立可能なのでしょうか。信頼を前提にしつつ、どの程度まで可視化や監視の仕組みを整備すべきか、このバランスに頭を悩ませる企業は増えています。

 本コラムでは、性善説をより健全にするために、透明性を補完する仕組みをどう設計すべきかを考えていきます。

 性善説とは、「人は本質的に善である」という考え方です。組織においては、従業員を信頼し自主性に任せる運用がこれにあたり、心理的安全性を高め、職場の信頼関係を築くうえで重要な役割を果たします。信頼を前提とした組織では、従業員の自律性やモチベーションが高まり、結果として創造性や業務効率の向上にも寄与することがあります。

 しかし一方で、近年のシステム環境の複雑化や、個人情報・重要情報へのアクセス機会の増加に伴い、「信頼だけで運用を続ける」ことには限界があることも事実です。情報漏えいは意図的な不正だけでなく、設定ミスや誤操作などのヒューマンエラーでも発生し得ます。また、アクセスログや業務履歴が十分に残っていない場合、問題発生時の原因究明や監査対応が困難となり、結果として従業員も組織も不利益を被ることがあります。

 性善説に基づく運用は否定されるべきものではなく、むしろ組織文化の健全性を支える大切な考え方です。 重要なのは、信頼だけに依存するのではなく、アクセスログや証跡管理などの仕組みによって透明性を補完することです。この観点からは、監視は“疑う行為”ではなく、むしろ正しい行動を後押しし、組織全体を守るための透明性として機能します。

 近年、企業を取り巻く環境は変化し続けています。法令やガイドライン、監査要件の拡大により、組織は説明責任を果たすことが以前にも増して求められるようになりました。これに伴い、情報の扱いや業務プロセスの可視化は、単なる管理の手段ではなく、組織の信頼を維持する重要な要素となっています。

 特に、個人情報や機密情報へのアクセスは誰がどの情報に触れたかを把握できる状態でなければ、問題が発生した際に原因の特定や対応が遅れ、組織全体のリスクにつながります。アクセスログや業務履歴などの記録が不十分な場合、トラブルの責任所在が不明瞭となり、問題とは関係のない従業員への不当な疑い、業務効率の低下、さらには外部監査での指摘などにつながる可能性もあります。

 このような背景から求められるのが、透明性が確保された運用です。アクセスログや操作履歴を適切に記録・管理し、必要なときに確認できる仕組みは、従業員が安心して業務を遂行できる環境を整えると同時に、組織全体の説明責任を果たす手段として機能します。

 また、透明性が確保された運用は、内部統制やコンプライアンスの観点でも有効です。どのような操作が行われたかを明確に示せることは、トラブルの未然防止にもつながり、結果として従業員・組織双方を守ることができます。信頼を前提にしつつ、必要な透明性を補完することが、現代の組織運営における重要なポイントと言えるでしょう。

 

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 「監視」という言葉を聞くと、多くの従業員は「疑われている」と感じるかもしれません。しかし、組織における監視の本質は、不正を疑うことではなく、正しい行動を後押しし、組織全体を守るための抑止力です。これは、性善説を否定するものではなく、むしろ信頼を前提にした運用を補完する仕組みと言えます。

 アクセスログや操作履歴などの“見える化”は、従業員が安心して業務を行える環境を作ると同時に、業務プロセスの健全性を保つ役割を果たします。誰がどの情報にアクセスしたかが明確になることで、問題が発生した場合でも迅速に原因を特定でき、対応が遅れることによる組織リスクを最小化できます。これは単なる管理や監視ではなく、組織と従業員双方を守るための安全装置です。

 さらに、監視の存在自体が抑止力として機能します。人は、行動が記録・確認されることを意識するだけで、意図的・偶発的な不正行為のリスクが低下する傾向があります。重要なのは、この抑止力が「誰かを疑う」ことを目的としたものでなく、正しい業務プロセスを維持し、安心して働ける環境を守るための仕組みである点です。

 結果として、監視は組織文化や従業員の心理的安全性を損なうものではなく、性善説に基づく信頼と両立できるのです。信頼を前提にした運用を維持しながら、必要な透明性を補完することで、組織はより健全で安全な状態を保つことが可能となります。

 

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 アクセスログや業務履歴などの可視化は、単に組織を守るだけでなく、従業員自身を守る効果も持っています。業務プロセスや操作履歴が明確に記録されていることで、問題が発生した際に「誰が何をしたのか」を客観的に示すことが可能となり、不当な疑いを受けるリスクを減らせます。

 例えば、不正による情報漏洩が発生した場合でも、アクセスログや業務履歴が適切に記録されていれば、誰がどのデータにアクセスし、どのような操作を行ったのかを正確に把握できます。これにより、漏洩に関与していない従業員が不当に疑われることを防ぐことが可能です。アクセスログが客観的な証拠として機能することで、従業員の立場を守りつつ、心理的安全性を高め、安心して業務に集中できる環境を整えることができます。

 さらに、可視化は組織全体のプロセス改善にもつながります。操作のパターンやアクセス状況が明確になることで、問題が起こりやすい箇所を特定し、業務プロセスの見直しや改善策の検討が可能です。結果として、トラブルの未然防止や効率化に寄与し、従業員の負担軽減にもつながります。

 つまり、アクセスログや証跡管理による可視化は、組織を守るだけでなく従業員を守るための安全ネットとして機能します。信頼を前提とした運用に透明性を組み合わせることで、従業員も組織も安心して活動できる環境を作り出すことができるのです。

 監視や可視化の仕組みは、組織や従業員を守るために設けられるものです。しかし、設置するだけでは安心感や理解は生まれません。実際の現場では、対象者がどのように感じるかも考慮することが重要です。

 こども性暴力防止法の施行を控え、学校への防犯カメラ設置について議論が進められています。その中で、当事者である子どもたち自身の意見を聞く場も設けられました。子どもたちからは、「監視されている気がしてちょっと困惑する」という声もあった一方で、「事件などが起きた際にはカメラがあった方が後々良くなる」「学校のさまざまな場所に防犯カメラを多く設置してほしい」といった意見も出ています。

 また、制度や対策を義務化する場合でも、その目的や意義が十分に説明されなければ、受ける側は単に「理由はわからないけど、やらなければいけない」と戸惑いや不信感感じてしまいます。このため、「対策に対する説明や周知もあわせて義務化してほしい」という意見が示され、受ける側への説明の重要性が示されています。

 この事例からもわかるように、透明性や監視の仕組みは、設置するだけでは十分ではありません。誰のために、どのような目的で記録・可視化されるのかを周知することが、心理的安全性や信頼を保つうえで不可欠であり、組織運営における重要なポイントとなります。

出典:日テレNEWS NNN  2025年11月22日
https://news.ntv.co.jp/category/society/8875fc7fe2104e1f9f3bf0789002ed59

 従業員を信頼する性善説に基づく運用を維持しつつ、必要な透明性や監査対応を実現するには、監査やログ管理の方法・運用ルールの設計が重要です。ここでは、心理的安全性を損なわずに監査を行うためのポイントを整理します。

  • アクセスログの可視化
    誰がどの情報にアクセスし、どのような操作を行ったかを明確に記録します。これにより、不正による情報漏洩が発生した場合でも、関与していない従業員が不当に疑われることを防げます。ログは、従業員を監視する道具ではなく、組織と従業員双方を守る客観的証拠として機能します。
  • プロセス改善・教育への活用
    記録された情報を分析し、業務プロセスの改善や従業員への教育・啓蒙に活用することで、日常業務の中で自然に適切な行動が促されます。これにより、組織全体のコンプライアンス意識や業務リテラシー向上にもつながります。
  •  定期的なレビュー・分析
    ログや証跡を単に保管するだけでなく、定期的にレビューや分析を行うことで、潜在的なリスクや問題傾向を早期に把握できます。結果として、未然防止策や改善施策につなげることが可能です。
  • 社内への周知・説明
    監査やログ管理の目的・ルールを従業員に周知することで、透明性を確保し心理的安全性を維持できます。加えて、自分の行動が記録されていることを意識すること自体が抑止力となり、不正や不適切な操作を未然に防ぎます

 このように、性善説に基づく信頼と透明性を両立させる監査運用では、単なる監視ではなく、目的を明確にしたログ管理と運用ルールの設計・周知が不可欠です。適切に可視化・分析を行い、社内に理解を広めることで、従業員の心理的安全性を損なわずに組織全体の透明性やガバナンスを確保できます。

 

 従業員を信頼する性善説に基づく運用と、必要な透明性の確保を両立させるには、適切なツールや仕組みの導入が有効です。弊社のBlackBoxSuiteは、組織の透明性を高め、内部不正リスクを抑止する仕組みを備えています。

  • アクセスログの詳細取得と可視化
    誰が、いつ、どの情報にアクセスしたか、どのような操作を行ったかを詳細に記録できます。ユーザーとアクセスされたデータを紐づけて管理できるため、問題が発生した場合でも、関与していない従業員を不当に疑うことなく、客観的に原因を特定できます。
  • ダッシュボードによる可視化と分析
    不審なアクセスやユーザーを一目で確認できるダッシュボード機能を提供します。これによりアクセス状況やリスクの兆候を迅速に把握することができます。
  • 操作履歴の追跡と証跡管理
    データの閲覧や編集、ダウンロードなどの操作履歴を体系的に管理します。必要な時に迅速に確認できるため、監査対応や法令・ガイドラインへの準拠が容易になります。また、データを基準として追跡できるため、問題発生時には関与したユーザーを迅速に特定することが可能です
  • 不審なアクセスの検知・アラート機能
    通常と異なるアクセスや不審な操作があった場合にアラートを出すことで、不正行為の早期発見が可能です。

 このように、BlackBoxSuiteは信頼を前提とした運用を補完する透明性の仕組みとして機能します。アクセスログや証跡管理、不審なアクセスの検知などの機能を活用することで、組織全体の安全性と健全性を維持することができます。

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 性善説は、組織にとって大切な価値観です。しかし、情報資産を扱う現場では「信頼しているから大丈夫」という姿勢が、結果として従業員も組織も守れない状況を生むことがあります。

 “見ている”仕組みは、不正を疑うためではなく、透明性を高め、正しい行動を後押しし、組織全体の健全性を保つための補完的な役割を果たします。また、従業員自身が自分の行動が記録されていることを意識することで、抑止力にもつながります。

 信頼と仕組みはどちらかを選ぶものではなく、両立することでより強固な内部統制が実現します。信頼に加えて、透明性を確保する仕組みを適切に設計することで、健全な組織運営と心理的安全性を両立させ、内部不正リスクへの備えも強化できます。

 組織運営においては、信頼と透明性を両立させることが、安全で健全な職場環境の構築に不可欠です。性善説を大切にしつつ、透明性を補完する――そのバランスこそ、これからの組織における安心と信頼の基盤となります。

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