「正常な操作に見えて、本当に正常ですか?」

 多くの企業が、アクセスログを取得し、情報漏洩のリスクを監視しています。しかし、日々発生する大量のログの中に、実は”不正の兆候”が紛れていたとしたら——?そして、それが人の目や単純な検索条件では見抜けないものだったとしたら?

 そんな時代に必要とされるのが、AIによるリスクスコアリングです。

 本コラムでは、AIとくにクラスター分析を活用したアクセスログ監視の革新性と、その実現方法について解説します。

 情報漏洩の多くは、明らかに不審な行動ではなく、日常的なアクセスや操作の中で行われます。特定の社員が日常的に顧客情報にアクセスするのは当然の業務かもしれません。しかし、ある日突然、通常とは異なるパターンで大量にアクセスしていたら——それは不正のサインかもしれません。

 しかし、そうした”微差”を、人手で見つけ出すのは困難です。単純な検索条件やルールベースでは、その操作が業務上必要だったのか、不正の意図があったのか、判断することはできません。

 多くの企業では、アクセスログを収集していたとしても、実際に目視で確認できるのはほんの一部です。特に大規模な3階層Webシステムなどでは、データアクセスの流れが複雑で、誰がどの情報にアクセスしたかを正確に把握するのが難しくなっています。

 ここで求められるのが、AI監査です。AIはログ監視において、人が気づかないパターンや微細な行動の変化を自動的に抽出し、異常検知やリスクスコアリングを行うことができます。これにより、従来の”ルールベース型”の監査から、”予兆検知型”の監査へのシフトが可能になります。

 

 アクセスログの監視においては、単に事前に不正のパターンを教師データとして定義し、それにマッチするアクセスがあるかをAIで探索するだけでは不十分です。なぜなら、システムの使われ方は企業ごとに大きく異なり、業務内容によっても正解となる操作が変わるからです。

 このような課題に有効なのが、教師なし学習(Unsupervised Learning)の代表格であるクラスター分析(Clustering Analysis)と言えるでしょう。クラスター分析では、アクセスログに含まれる特徴量(例:アクセス時間帯、操作頻度、対象データの種類、端末IDなど)をベースに、似たような操作をグルーピングし、その中から”外れ値(アウトライアー)”を抽出します。

 特に以下のような技術が活用が有効と考えられます:

  • K-means clustering:操作傾向を複数のグループに分類し、逸脱した行動を特定
  • DBSCAN(密度ベースクラスタリング):アクセスの”密集度”に基づいて異常を発見
  • t-SNEやUMAPによる次元圧縮と可視化:監査担当者が視覚的に異常を把握可能

 こうしたアルゴリズムにより、人手では見逃される“正常に見える不正”を浮き彫りにできます。

 AIを導入する際に問題となるのが、そもそも監視に適したデータアクセスログが十分に取得されているかという点です。AI監査は、元データの質に大きく依存します。

 まずは、アクセスログに以下のような情報が含まれていることが前提です:

  • 誰が(ユーザーID、所属)
  • いつ(日時、頻度)
  • どこから(端末、IP)
  • 何に対して(データID、ファイル名、DBテーブル)
  • 何をしたか(閲覧、更新、ダウンロードなど)

 これらを整備したうえで、クラスター分析や異常検知アルゴリズムを設計していく必要があります。また、分析結果のスコアや可視化の方法も重要で、監査担当者が“なぜこの操作が危険と判断されたのか”を説明可能にしておくことも求められます。

BlackBoxSuiteは、
「誰が、いつ、どこで、どのデータに対して、何をしたのか」を
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Webサイトに公開されていない資料をお
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こんな方に最適な資料です。

社内システムのデータアクセスが心配
低コストでログ監査を導入したい方
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 BlackBoxSuiteでは、通常の3階層Webシステムでは取得が難しい「ユーザーとアクセス対象データの対応関係」までを「Trace Series」によって正確に取得し、AI監査に必要な情報を網羅的に記録しています。

 そこにAIモジュール「Gureum」を連携させることで、以下のような活用が可能です:

  • 利用傾向からユーザーを自動クラスタリング
  • クラスタ内の異常行動を自動抽出しスコアリング
  • アクセスのスコアリング結果をダッシュボードで可視化
  • スコアリングが高かった高リスクなアクセスがあった際には即座にアラート通知

 これにより、業務に必要なアクセスと、不正リスクのあるアクセスを明確に切り分け、セキュリティ対策の質とスピードを飛躍的に高めることが可能です。

 

 AI監査の導入に対して、現場から以下のような不安の声が聞かれることも懸念されるかもしれません:

  • 「AIがうまく不正を抽出できなかったら意味がないのでは?」
  • 「そもそもログを整備するのに時間と工数がかかる」
  • 「社員を“監視”する必要があるのか?」

 これらの懸念に対し、重要なのは“目的は社員を守ること”であるという視点です。不正を未然に防ぐことで、本人のキャリアや会社の信頼を守ることができる——そのためにAIによるアクセスログの監視は有効なのです。

 また、BlackBoxSuiteはログ整備からAI分析まで一気通貫で支援できるため、導入負荷も最小限に抑えることができます。

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 AIによるアクセスログのリスクスコアリングは、これからの情報セキュリティ対策において不可欠な技術です。人手では到底対応しきれないログ監査の世界に、AI監査を取り入れることで、情報漏洩や内部不正の予兆を早期に捉え、対応することが可能になります。

 これらの懸念に対し、重要なのは“目的は社員を守ること”であるという視点です。不正を未然に防ぐことで、本人のキャリアや会社の信頼を守ることができる——そのためにAIによるアクセスログの監視は有効なのです。

 “見えない不正”を“見える化”し、“正常に紛れた異常”を確実に抽出するために、今こそAI監査の力を活用すべきタイミングです。

 ぜひ一度、BlackBoxSuiteでその可能性をご体感ください。

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