コラム

「制御(ブロック)」か「監視(ログ取得)」か
情報漏洩対策を検討する際、多くの企業でまず思い浮かべるのは「禁止」や「制御」といったアプローチではないでしょうか。たとえば、USBメモリへのコピーを禁止する、外部へのメール添付を制御する、アクセス権限によって特定のデータへの利用を制限するといった方法がこれにあたります。こうした「制御(ブロック)」は、代表的かつ分かりやすい対策として幅広く導入されています。
しかし、果たして「制御(ブロック)」だけで十分といえるのでしょうか。
一般的な犯罪抑止の例では、防犯カメラに代表されるように「監視」が高い効果を発揮することが知られています。情報セキュリティの分野においても、操作を記録して監視することは、心理的な抑止効果と事後の証跡確保という二つの大きな役割を持ちます。その意味で、「制御」と「監視」はどちらか一方を選ぶものではなく、相互に補完し合う関係にあると考えられます。
本コラムでは、両者の特徴を整理しつつ、業務効率とセキュリティを両立させるために企業がどのようなバランスを取るべきかを考えていきます。
目次
1.制御(ブロック)型対策の特徴と限界
情報漏洩対策の中で「制御(ブロック)」は、多くの企業にとって最もイメージしやすく、導入しやすい方法の一つです。たとえば、USBメモリの利用を禁止する、ファイルの印刷を制御する、外部ドメイン宛のメール添付を禁止するといった施策がこれにあたります。
また、システムやデータへのアクセスを利用者ごとに制御する「アクセス権限管理」も代表的な制御型対策の一つです。これらは、不正や誤操作の発生を防ぎために物理的・技術的に行動を遮断できる点で非常に有効です。
一方で、「制御(ブロック)」には限界も存在します。業務上必要な操作まで制限してしまうと、現場の利便性や生産性が低下する恐れがあります。結果として、利用者が業務を進めるために非正規の手段を取ってしまい、かえってリスクが増大する可能性も否定できません。いわゆる「シャドーIT」の発生はその典型例です。
また、アクセス権限管理にも注意が必要です。アクセス権を与えられた利用者が意図的に情報を不正に利用したり、外部に漏洩させたりするリスクは常に存在します。権限管理は重要なデータへのアクセスを制御する仕組みとして有効ですが、「権限を持つ利用者がその権限を悪用しない」という前提に依存しているため、内部不正に対しては完全な防御策とはいえません。
このように、「制御」は重要な対策である一方、制御だけでは防ぎきれないリスクがあることも理解しておく必要があります。
2.監視(ログ取得)型対策の役割と効果
前章で制御だけでは防ぎきれないリスクがあることを確認しました。そのようなリスクに対応するのが、アクセスログの取得と監視です。アクセスログを取得・分析・可視化することで、不審なアクセスの追跡やリスクの可視化が可能となり、情報漏洩対策の中核として活用できます。
アクセスログの主な効果は以下の通りです。
- リスクの早期検知
不審なアクセスや通常業務とは異なる操作を早期に発見できます。 - リスクの高いアクセスの把握
日々のアクセスログを取得・分析することで、通常の業務との逸脱やリスクの高いアクセスの傾向を把握できます。 - 心理的抑止効果
利用者が自分の操作が記録されていることを意識することで、不正行為を自然に抑制できます。 - 事後対応・証跡確保
万が一の情報漏洩時に、証拠や原因調査に活用できます。
このように、アクセスログの取得と監視は、制御だけでは防ぎきれないリスクに対応し、不正や情報漏洩を未然に防ぐ実務的な手段として有効です。また、アクセスログは万が一情報漏洩が起こってしまった際にも証拠や原因調査の際にも大きな役割を果たします。
次章以降では、この監視の具体的な効果について、より詳しく解説していきます。
3.ログ分析とリスク検知
前章では、監視(ログ取得)が制御だけでは防ぎきれないリスクに対応する重要な手段であることを確認しました。ここでは、その監視の実務的な効果の一つであるリスクの早期発見とリスクの高いアクセスの把握について詳しく見ていきます。
アクセスログを単に記録するだけでなく、分析・監視することで、通常業務との逸脱や不審なアクセスを早期に検知できます。また、継続的なログの取得と分析により、どのアクセスがリスクの高い行動につながりやすいかを把握することが可能です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 不審なアクセスの検知
大量ダウンロード、業務時間外のアクセス、機密性の高いデータの大量照会等、一般的にリスクの高いとされているアクセスを検知します。 - 通常業務パターンとの比較
日常的にアクセスログを取得・監視することにより、通常の業務パターンと照らし合わせ、逸脱操作や不自然なアクセス傾向を可視化することができます。これにより、リスクの高いアクセスや潜在的な不正行為を特定する分析にも役立ちます。 - ルール改善や教育へのフィードバック
リスク分析の結果を基に、どの操作や行動がリスクを生みやすいかを特定し、ルールや従業員教育に反映させることで、未然防止策を強化できます。
このように、アクセスログは単なる記録ではなく、内部不正や情報漏洩を未然に防ぐための実務的手段として機能します。
4. 心理的抑止効果で不正を防ぐ仕組み
監視のもう一つの重要な効果は、心理的抑止です。一般的な犯罪の抑止においても、防犯カメラを代表とする監視は大きな効果を上げています。
たとえば、2025年3月、日経電子版では大阪市内におけるひったくり事件の件数が過去20年間で99%減少したと報じられました(出典:日経電子版2025年3月22日)。背景の一つとして、防犯カメラの設置が進んだことが挙げられます。カメラによって「誰かに見られている」という意識が働くことで、犯罪行為を思いとどまらせる効果が生じたと考えられます。
同様に、ログの監視によりユーザーが自分の操作が記録されていることを認識するだけで、不正行為を抑止する効果があります。
監視が存在することで、「権限を持っていても、不正を行えば追跡される」という意識が働き、結果として情報漏洩や不正行為のリスクを低減できます。

出典:日経電子版 2025年3月22日
5.情報漏洩発生時の事後対応と証跡活用
また、アクセスログを日常的に取得しておくことで、万が一情報漏洩が発生した際に、証拠として活用したり、原因や経緯の調査をスムーズに行うことが可能になります。
- 漏洩データへのアクセス履歴の特定
誰が、いつ、どのファイルにアクセスしたのかを正確に把握することができ、原因や関係者の早期発見につながります。また被害の範囲や影響を迅速に把握でき、二次被害の防止にも寄与します。 - 原因や経緯の分析
ログを追跡することで、どの操作や業務プロセスで問題が生じたかを特定できます。特定した情報を基に再発防止策を策定でき、同様のリスクを減らす組織的対応が可能になります。 - 事後対応の迅速化
ログが整備されていることで、情報漏洩発生時に関係者への対応や報告を迅速に行えます。規模や影響度に応じた適切な対応フローを構築するうえで、ログの存在は不可欠です。 - 改善への活用
リスクが生じやすい操作や行動の傾向を分析し、ルールや教育内容に反映できます。ログ分析の結果は、単なる事後対応にとどまらず、組織全体のセキュリティ文化の改善にもつながります。
アクセスログは未然防止だけでなく、万が一情報漏洩が発生した場合に迅速かつ正確な対応を支える重要な資産です。また、分析結果を組織の改善に活かすことで、セキュリティレベルを継続的に高めることができます。
6.BlackBoxSuiteが実現する監視型アプローチ
「制御」と「監視」、情報漏洩対策を行ううえではどちらも重要です。しかし、ここまで見てきたように制御だけでは限界があり、監視はその制御では防ぎきれないリスクに対応することができます。
ここまで確認してきた監視の効果を実務で活用できるソリューションがBlackBoxSuiteです。 BlackBoxSuiteではアクセスログを正確に記録・分析することで、リスクの早期発見と情報漏洩の未然防止を支援します。さらに、監視による不正の抑止や、詳細なアクセスログが残っていることで万が一情報漏洩が発生した際の事後対応にも活用できます。
主な特徴は以下の通りです。
- 詳細なアクセスログ取得・分析
誰がどのデータに、どのようにアクセスしたかを正確に記録します。取得したログは分析され、データアクセス情報を一目で把握できるモニタリング画面で可視化されます。そのため異常やリスクの兆候を早期に検知し、情報漏洩を未然に防ぐことが可能です。また、万が一情報が漏れてしまった場合でも、記録があることで原因の確認や対応をスムーズに行えます。 - 不正検知・アラート機能
取得したログをリアルタイムに分析し、通常とは異なる操作やリスクの高い行動を自動で検知します。異常が発生した場合にはアラートを発信し、担当者が即座に確認・対応できるため、被害の拡大を防ぐことができます。 - 操作記録による心理的抑止
「自分の操作が常に記録・監視されている」という意識がユーザーに働き、内部不正を思いとどまらせる効果があります。 - 事後分析と改善への活用
ログを基に業務プロセスや操作のリスク傾向を把握でき、セキュリティポリシーや教育内容の改善に反映することが可能です。
このように、BlackBoxSuiteはアクセスログの取得・分析を通じて、監視を軸とした情報漏洩対策を実務レベルで支援します。ログを活用することでリスクの早期発見や不正の抑止、万が一の場合にも事後対応の円滑化が期待でき、組織のセキュリティ改善にもつなげやすくなります。
BlackBoxSuiteはアクセスログの取得・分析を通じて、
監視を軸とした情報漏洩対策を支援します。

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7.まとめ
本コラムでは、情報漏洩対策における「制御(ブロック)」と「監視(ログ取得)」の特徴や役割について解説しました。
制御は、USBメモリへのコピー禁止や外部メールの添付制御、アクセス権限管理など、業務上の不正や誤操作を物理的に防ぐための有効な手段です。しかし、過度な制御は業務効率の低下を招く場合があります。また権限を持つ利用者による情報の不正利用など、制御だけでは防ぎきれないリスクも存在します。
一方で、監視はこうした制御だけでは対応できないリスクに対処する手段として有効です。アクセスログを取得・分析することで、誰がどのデータにどのようにアクセスしたかを把握でき、通常業務との逸脱やリスクの高い行動を早期に検知できます。また、自分の操作が記録されているという意識は不正行為の心理的抑止効果を生み、万が一情報漏洩が発生した場合でも、詳細なアクセスログは原因調査や事後対応、さらには組織全体のセキュリティ改善に活用できます。
制御と監視はそれぞれに重要な役割を持ちます。それぞれの特徴や効果を適切に理解し、日常の業務に活かすことで、実務レベルでの情報漏洩リスクをより効果的に軽減できます。
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