アクセスログの取得・活用は十分にできていますか?

 皆さんの組織では、日々のアクセスログをきちんと取得できていますか。取得できていたとしても、そのログは十分な粒度で記録されているでしょうか。また、取得したログを実際に活用して、潜在的な内部不正リスクの検知や監査対応に役立てられているでしょうか。

 アクセスログは、単なる履歴データではなく、内部不正の兆候を早期に把握する重要な手段です。アクセスログを日常業務で活用できる体制を整えることは、内部不正への迅速な対応やコンプライアンス遵守、監査資料作成の効率化につながります。

 本コラムでは、日常的なアクセスログ分析を通じて潜在的なリスクを見つけるポイントと手法について解説します。

 アクセスログとは、システムにおける操作やアクセスの履歴を記録したデータのことです。誰が、いつ、どこで、どのデータにアクセスし、どのような操作を行ったかという情報が残り、情報漏洩や内部不正への対応において非常に重要な「証拠」となります。

 アクセスログの取得・分析には大きく分けてふたつの意義があります。

 ひとつは不正行為の兆候検知及び未然防止です。ログを確認することで、業務上の不自然な操作やアクセスパターンを早期に把握できます。たとえば、特定の社員が業務時間外に頻繁に特定ファイルへアクセスしていた場合、それが不正行為の兆候である可能性があります。さらに、アクセスパターンを継続的に把握することで、通常業務からの逸脱による不正行為の兆候も検知可能です。たとえば、普段は閲覧のみの業務を行っている社員が大量のデータをコピーしたり、通常使用しないデータにアクセスした場合などが該当します。

 もうひとつは、コンプライアンス遵守や監査対応です。日常的にログを整理・分析しておくことで、監査やレポート作成の際にもスムーズに対応できるようになり、組織全体のセキュリティ体制の信頼性向上にもつながります。また、問題発生時には過去のログをもとに原因を特定しやすくなり、迅速な対応や適切な対策の実施が可能です。さらに、定期的なログの分析や可視化により、組織全体で潜在的なリスクを把握できるため、セキュリティ体制の信頼性向上や関係者への説明・報告にも役立ちます。

 アクセスログは単に記録として保管するだけでなく、日常業務に組み込み、潜在的リスクを把握するための有効なツールとして活用することが重要です。

 内部不正は、組織内部の人物が関与する不正行為全般を指します。情報漏洩、機密データの不正持ち出し、業務プロセスの悪用など、その手口は多岐に渡ります。アクセスログ分析では、直接的な不正行為の発見だけでなく、不正が起きる前の兆候を捉えることが重要です。

 内部不正の兆候として注目すべきポイントは以下の通りです。

  • 担当業務外データへのアクセス
    営業部門の社員が技術部門の開発資料にアクセスするなど、担当業務に関係のないプロジェクトや部門のデータへのアクセス行為
  • 勤務時間外アクセス
    深夜や休日に業務用システムやファイルにアクセスするなど、通常の業務時間外のアクセス行為
  • 特定データへの集中アクセス
    特定顧客の個人情報や社内機密データを短時間で複数回閲覧・検索するなど、特定のファイルやデータへのアクセス行為
  • 通常業務からの逸脱行動
    普段は閲覧のみ行っている社員が、大量のファイルをダウンロードするなど、日常の業務で行われていないアクセス行為

 これらの行為は単独では必ずしも不正とは限りません。アクセスログの継続的な分析を通じてパターンを把握し、通常業務からの逸脱や異常行動を見極めることで、潜在的なリスクを早期に発見し、未然防止につなげることが可能です

 異常と思われる行動の背景には正当な業務理由が存在する場合もありますので、複数の指標を組み合わせて総合的に判断することが求められます。

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 2章で紹介した内部不正の兆候を正しく捉えるためには、アクセスログの取得だけでなく、日常的なパターン分析が欠かせません。重要なのは、日常的にアクセスの傾向やパターンを分析し、通常の業務行動との違いを把握することです。

  アクセスパターンの分析において注目すべきポイントは以下の通りです。

  • ユーザーごとのアクセス傾向
    各社員の通常業務でのアクセス時間帯や頻度、使用するシステムやデータの種類を把握することで、通常業務から逸脱した行動を検知しやすくなります。
  • システム・データごとのアクセス集中状況
    特定のファイルやシステムに短期間で複数のアクセスが集中している場合、情報抽出や不正利用の可能性が考えられます。アクセスが集中するタイミングや対象を継続的に把握することが重要です。
  • アクセス時間帯の異常
    勤務時間外や休日のアクセス、通常とは異なる時間帯の操作は、通常業務とは異なる行動として注意が必要です。継続的にモニタリングすることで、潜在的なリスクを早期に把握できます。
  • 複数の指標の組み合わせ
    単一の指標では異常かどうか判断しづらいため、複数のアクセス傾向や行動パターンを組み合わせて総合的に分析することが重要です。たとえば、勤務時間外アクセスと特定データへの集中アクセスが同時に確認された場合、通常の業務からの逸脱として評価できます。
  • 異常パターンの可視化 
    アクセスログを可視化することで、異常行動のパターンや傾向を直感的に把握できます。グラフやヒートマップを用いることで、異常行動の発見や報告資料の作成もスムーズになります。

 このように、アクセスパターンの分析は、単なるログの記録や確認にとどまらず、潜在的なリスクを把握し、日常業務に組み込んだ監視・管理体制の構築に役立てることができます

  潜在的な内部不正を抑止するには、単に兆候を知るだけでなく、実際に不審な行動を早期に検知する仕組みを整えることが重要です。ここでは、具体的なプロセスと分析手法に焦点を当てます。

  • リスク指標の定義
    まず、異常行動を定量的に判断するための指標を設定し、指標をもとに「通常業務の範囲」と「異常行動の範囲」を明確にします。
    – 勤務時間外アクセスの回数
    – 特定データへの短時間集中アクセス
    – 大量ダウンロードやコピー操作の発生件数
  • アラートルールの設定
    定義したリスク指標に基づき、異常が発生した場合に通知されるルールを設定します。
    – 「1時間以内に同一データを10件以上アクセス」などの閾値設定
    – 連続した異常行動の検出(複数システム・複数データへの短期集中アクセス)
  • 行動パターンの可視化
    異常検知には、アクセスログの可視化が有効です。
    – 時系列グラフでアクセス集中時間を把握
    – ユーザーごとの操作量や対象データのヒートマップ
    – 通常業務との偏差を色分けして表示
  • 異常の早期確認・対応プロセス
    アラートが発生した場合には、担当者がすぐに確認できるフローを用意します。
    – アラート内容の即時レビュー
    – 正当な業務理由の有無の確認
    – 必要に応じた一時的なアクセス制限や調査
  • 継続的なチューニング
    運用開始後も、誤検知の傾向や新たなアクセスパターンを反映して指標や閾値を調整することで、早期検知精度を向上させます。

 大量のアクセスログを日常的に監視するには、組織全体で効率的に分析できる仕組みが必要です。BlackBoxSuiteでは以下の機能を備えており、4章で示した不審な行動を早期に検知する仕組みと、大量のアクセスログを日常的に効率的に監視する体制の両方を実現できます。

  • アクセスログの取得と自動分析
    誰が、いつ、どのデータにどのような操作を行ったかを詳細に記録するとともに、自動分析により不審な行動や異常なアクセスパターンを検出。膨大なログも効率的に監視でき、リアルタイムの監視だけでなく、事後監査等にも活用可能です。
  • 常時モニタリング
    蓄積されたログを基に、日常的にユーザーやデータのアクセス状況を監視。ダッシュボードでアクセス状況とリスクを一目で把握でき、不審なアクセスやユーザーを早期に発見できます。
  • アラート機能による迅速な通知
    設定した条件に基づき、疑わしい操作やポリシー違反が発生した際に即時アラートを発信。担当者がすぐに対応できる環境を整えます。
  • リスク分析による行動のスコアリング
    蓄積されたログや操作履歴を分析し、行動ごとのリスクレベルを算出。リスクの高い事象を優先的に把握でき、対応の優先順位付けに役立ちます。
  • AIによるリスク分析
    AIを活用することで、従来のルールベースでは検知が難しい潜在的なリスクを抽出。行動パターンの変化や不自然なアクセスを捉え、検知精度を高めます。

 これらの機能により、日常業務に組み込む形で運用できるため、負担を最小限に抑えつつ監視体制を強化できます。

 

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 これまで見てきたように、アクセスログの取得と分析は内部不正の早期検知に有効です。さらに、アクセスログは個人任せにせず組織全体で活用できる体制を整えることも重要です。属人化を防ぎ、説明責任を果たせる体制を構築することで、日常のセキュリティ対策だけでなく監査対応にも活かせます。

  • ログ管理ルールの明確化
    取得範囲、保持期間、アクセス権限、分析方法などを標準化します。これにより、担当者が交代しても同じレベルでログを管理・分析できる環境を整備できます。
  • 定期監査の仕組み化
    チェックリストやフローを整備し、担当者が異なる場合でも同じ手順で監査・確認が行えるようにします。これにより、リスクの見落としや対応遅れを防ぐことができます。
  • ナレッジ共有
    分析結果や異常事例を組織内で共有することで、担当者間での情報格差をなくし、属人化を防ぎます。共有された知見は、次回の分析や監査にも活用可能です。

 このように、ログ管理ルールの明確化、定期監査の仕組み化、ナレッジ共有を組み合わせることで、属人化しない監査体制を構築できます。組織全体で一貫した体制を維持することは、潜在的なリスクの早期発見や迅速な対応にもつながります。

 

 アクセスログ分析は、単なるアクセス履歴の確認ではなく、潜在的な内部不正リスクを早期に発見する手段です。日常的にアクセスパターンや異常行動をチェックすることで、表面化していない不正兆候を把握できます。

 異常行動の早期検知、効率的なログ分析ツールの活用、属人化しない監査体制の構築を組み合わせることで、組織全体のリスク管理力を大きく向上させられます。日々のアクセスログ活用は、内部不正対策だけでなく、監査対応やコンプライアンス準備にも直結します。

 組織全体でアクセスログの価値を最大化し、継続的に改善していくことが、内部不正対策の鍵となります。

 

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