「犯罪の温床となる企業内のリスクを最小限に抑えるために、どのような施策が効果的なのか?」― これは様々な人が集まる企業内で、不正を減らすための興味深いテーマです。組織が犯罪予防に取り組む方法について、効果的な手法と戦略を探求し、犯罪抑止力を高めるための鍵を見つけていきましょう。

犯罪心理学において、犯罪抑止力(Crime Deterrence)は、犯罪を防ぐために犯罪者が犯罪行為を控える要因やメカニズムを指します。犯罪抑止力を高めるために検討される要因や対策は多岐にわたりますが、以下にいくつか一般的に考えられる要素を示します。

一つずつ見てみましょう。

| ア.刑罰の厳格化(General Deterrence)

犯罪者が逮捕され、刑罰を受ける可能性が高い場合、犯罪抑止力が高まるとされます。刑罰の厳格化は、犯罪を犯すリスクを高めることで犯罪を減少させることを目指します。

| イ.特別な罰則(Specific Deterrence)

犯罪者に対して特定の刑罰を科すことで、その個人が再び同じ犯罪を犯すことを抑止しようとするアプローチです。特別な罰則は、個別の犯罪者に対する抑止力を強化するために使用されます。

| ウ.社会的監視(Social Surveillance)

社会的な監視やコミュニティの監視が犯罪抑止力を高めると考えられています。人々が自分の行動が監視されていると感じると、犯罪を犯しにくくなる可能性があります。

| エ.教育と啓発(Education and Public Awareness)

犯罪抑止力を高めるために、犯罪のリスクや影響についての教育と公衆啓発が重要です。人々が犯罪の結果を理解し、そのリスクを避ける動機づけを持つ可能性が高まります。

| オ.社会的支援とリハビリテーション(Social Support and Rehabilitation)

犯罪者に対するリハビリテーションプログラムや社会的支援を提供することで、再犯率を低減し、犯罪抑止力を高めることができます。

| カ.経済的機会の改善(Improving Economic Opportunities)

経済的な不平等や貧困が犯罪の原因となることがあります。経済的機会を向上させる政策やプログラムを実施することで、犯罪抑止力を高める取り組みも行われています。

犯罪抑止力を高めるためには、これらの要因を組み合わせた総合的なアプローチが最も効果的であるとされています。また、犯罪抑止力の効果は文化や社会のコンテクストによって異なるため、業界や企業文化ごとに適切な戦略を採用することが重要です。

ではその具体的な方法を見てみましょう。

企業内で犯罪を減らすためには、犯罪抑止策を導入し、組織内の犯罪リスクを最小限に抑えるための対策が必要です。以下に、企業が採用できる効果的な対策をいくつか紹介します。

A.セキュリティ体制の強化:

企業はセキュリティ体制を強化し、物理的なアクセス制限、監視カメラの設置、セキュリティガードの配置などを含め、施設のセキュリティを向上させることが重要です。

| B.バックグラウンドチェックと従業員スクリーニング:

従業員の採用前に適切なバックグラウンドチェックを実施し、信頼性の高い従業員を採用することが大切です。また、従業員の行動を監視し、異常な行動を早期に検出できる仕組みを導入することも考慮されます。

| C.教育とトレーニング:

従業員に犯罪のリスクや組織の方針について教育とトレーニングを提供し、犯罪の予防意識を高めます。特に、倫理的行動とコンプライアンスに関するトレーニングは重要です。

D.内部監査と監視:

組織内部で監査体制を確立し、不正行為や不正規行為の兆候を監視し、報告できる仕組みを整備します。不正行為の発見が早期に行われれば、迅速な対応が可能となります。

E.インセンティブと報酬制度の検討:

不正行為を減少させるために、倫理的な行動やコンプライアンスを奨励するインセンティブと報酬制度を検討します。不正行為に対する厳正な処分も含めたポリシーを策定し、実施します。

| F.外部の専門家と連携:

企業は外部のセキュリティコンサルタントや法的専門家と連携し、犯罪抑止策やリスク管理の助言を受けることが役立ちます。

G.レポートと対応の明確化:

従業員が不正行為を報告しやすい仕組みを設け、報告者を保護するポリシーを策定します。また、不正行為の報告に対する適切な対応手順を明確化します。

| H.データ分析と予測:

データ分析を活用して、犯罪の傾向やリスクを予測し、それに対応する対策を講じることができます。

企業は、これらの対策を総合的に実施し、犯罪抑止力を向上させることが重要です。また、法的規制や業界のベストプラクティスに適合することも大切です。

では実際に世の中で起きている、企業内の従業員による犯罪・不正事件を見てみましょう。

ここで、2023年に実際に起きた、従業員が原因の情報漏洩事件をいくつか紹介します。
数か月で、分かっている範囲でこれだけの事件が発生していることから、発覚していないものも含めるとかなりの頻度であることが想像できます。

2023年8月:

  • 航空会社のO株式会社は、同社に所属していた退職者が業務上の地位を利用して同社保有の保安情報を不正アクセスし、外部へ持ち出し 

| 2023年7月:

  • 私的目的でデータベース不正閲覧、顧客の個人情報を第三者へ提供、地方銀行H
  • 患者情報を知人に漏えい、T病院が看護師を停職処分
  • 大手通信会社N、流出懸念に続報発表、元派遣社員が596万人の情報不正持ち出し

2023年4月:

  • 行政書士が元勤務先に不正アクセス、裁判所が罰金30万円を命令 

ではなぜ、このような犯罪・不正は無くならないのでしょうか。

犯罪を防止するための抑止力対策を導入しても、完全に犯罪を無くすのは難しい場合があります。これにはいくつかの原因が考えられます。

| 社会的要因:

犯罪は社会的な要因と関連しており、貧困、不平等、社会的排除などの問題が犯罪の原因となることがあります。これらの問題は単純な抑止力対策だけで解決するのが難しく、社会的な問題にも取り組む必要があります。

| 心理的要因:

犯罪者の心理的な要因も重要です。犯罪者はしばしば異常な心理状態、犯罪的な価値観、依存症などに苦しんでいることがあります。これらの要因を解決するためには、心理的な治療やカウンセリングが必要です。

| 犯罪の多様性:

犯罪は多種多様であり、一つの対策がすべての種類の犯罪に有効であるわけではありません。犯罪の種類に合わせて対策を選定し、調整する必要があります。

| 犯罪の隠れた性質:

一部の犯罪者は犯罪を隠すために巧妙な手法を用いることがあります。犯罪の発見や捕捉が難しい場合、犯罪の防止や減少が難しいことがあります。

| 制度的問題:

法執行機関や司法制度の問題、証拠の不足、刑事司法の遅延などが犯罪の減少を妨げることがあります。制度改革が必要な場合もあります。

| 新たな犯罪形態:

技術の進化や社会の変化に伴い、新たな犯罪形態が現れることがあります。これに対応するためには、対策の改良や更新が必要です。

したがって、犯罪の防止には継続的な取り組みと多面的なアプローチが必要です。社会的な問題への対応や教育、心理的支援、法制度の改善、テクノロジーの活用など、幅広い対策が組み合わさることで、犯罪の減少を実現するのに役立ちます。

企業内で起きてしまう、犯罪・不正行為を行う人の心理は、一般的な考えの人の思考を大きく上回る精神状態であり、常識は通じないことが分かります。
そして、その行為を最小限に抑えるための抑止力としては、「罰則規定」、「監視」、「教育、啓蒙」、「経済的不平等の是正」が効果的で、一時的な対策ではなく、具体的な行動を日々継続していくことが重要です。
また、具体的な事件では、従業員による不正を列挙しましたが、それ以上に、外部からの不正アクセスがとても多いことも事実です。
このような犯罪・不正を、完全にゼロにすることはできないことを前提とし、事件・事故が起こったときに、トレース・調査できる環境を用意しておくことが重要です。

このように、漏れてしまっては困る情報へのアクセスを、内部でも外部でも、すべて取得し、監査運用が行える「BlackBox Suite」の重要性がご理解いただけると思います。
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